注目の最高裁判決が出ました(同一労働同一賃金)

 政府が導入を進める「同一労働同一賃金」制度は、正規労働者と非正規労働者の待遇格差の違いをどこまで認容するのかあいまいなところが多く、制度設計をどのように進めていくか、苦慮されている企業が多いのですが、昨日、この件に関する2件の最高裁判決が出ました。パート労働者、アルバイト労働者に対するボーナスと退職金支給に関する判決で、いずれも非正規労働者に支払いをしないことを「不合理とまでは言えない」と原告側の逆転敗訴となりました。

 今年4月1日、まず大企業において法施行がなされ、今回初めての最高裁判決であったため、様々な企業がこの判決の行方を注視していました。特に正社員と契約社員・パート社員との待遇格差が存在する企業では、今後の制度設計に大きく影響するため、特に注目が高かったと思います。実は明日15日にも別の最高裁判決が控えておりますので、コメントは後日述べたいと思います。

  日本の裁判制度は3審制であることは皆さんご存知だと思いますが、地裁・高裁が事実審であるのに対し、最高裁は法律審で審理が進められます。つまり最高裁では事実認定は行わず、法律をどう当てはめるかを判断するため、通常口頭弁論は開かれず、判決が言い渡されることが多いのですが、今回は口頭弁論が開かれました。このようなケースの場合は、高裁の判決が変更、あるいは覆ることも多く、今回はある意味、高裁の判決が変更される可能性を示唆していました。通常、高裁の判決に不服な場合、必ず最高裁に上告できるわけではなく、上告理由が必要になります。すなわち、憲法違反の恐れがある、これまでの判例を変更する可能性があるなどの事由が必要なため、最高裁まで争うケースは、実はそんなに多いわけではありません。今回は最高裁まで争うこととなった背景には、本問題において、法の解釈の在り方、適用について困難であったため、最高裁まで裁判が継続されたといえます。 非正規の労働者にとっては納得し難い判決と言えますが、多くの経営者は胸を撫で下ろしたというのが本音ではないでしょうか?ただ、今回の判決は今後もリーディングケースになるわけではなく、案件によっては、違法性があることを指摘しています。今後、個別具体的に支給される手当や賞与、退職金等の意味合いや趣旨等を検討し、整理を進めていく必要があります。