労務アドバイス vol.026
労働時間の上限規制について考える (2018.12.18)
2019年4月より、時間外労働の上限規制が設けられます。中小企業は法の適用が2020年4月からと1年遅れとなりますが、改正により、来年度の時間外協定届の書式も変更になります。特に、特別条項付きの時間外・休日労働に関する協定届は、原則の協定届と、特別条項とで2枚に渡る書式に変更が予定されています。
労務管理上の留意点
1.告示⇒法律に規制対象が変わる意味について
この時間外労働時間の上限規制についての一番の留意点は、法律で罰則を伴った規制を行うという“絶対的規制”に変わるということです。
(違反の場合、6か月以下の懲役または30万以下罰金の刑事罰が科せられます)
単月100時間未満、年間720時間等の時間規制のみに目が行きがちですが、このことも着目しなければなりません。
今までは、告示上の限度時間、つまり、1ヶ月45時間、年間360時間を越える36協定の締結は告示違反ではあるが、法違反ではないため、労基署はその36協定を受理せざるを得ませんでした。今までは残業時間の再検討を事業場側に促すスタンプを押印する指導しかできませんでしたが、改正後は罰則の適用を念頭に入れた指導ができるようになります。
例えば、法改正後に特別条項なしに月間50時間、年間500時間の時間外労働に労使合意した36協定を締結したとします。しかしながら、この36協定は(告示ではなく)法律に抵触しているので、労働基準法13条が適用され、法律に抵触する協定部分については、法律まで引き下げられる、つまり、月間45時間、年間360時間まで引き下げられた協定時間とみなされることになります。よって月間45時間を超える残業を従業員にさせた時点で、事業主が処罰の対象となってしまうわけです。
2.時間外労働の上限規制の対象が休日労働を含む時間となること
通称36(サブロク)協定とは、時間外労働、休日労働日数の制限についての協定です。従来は時間外労働時間と法定休日労働日数は別のカウントとされていました。(法定休日以外の所定休日の扱いについては明確には定められておらず、時間外に含めるか休日労働に含めるかは各事業所ごとの裁量とされていました。)
今回の改正では、単月及び年間の時間外労働の上限総枠の中に休日労働時間も含むということになっています。
企業の労務管理の面につきましては、従業員の労働時間の把握方法を見直さなければならない可能性も出てくるのではないでしょうか。
3.定額残業代制度への影響
現状“定額残業代”を導入している企業は注意が必要です。特に残業代の高騰を防ぐためだけに、極端な長時間分の定額残業手当を定めているような事業所は、36協定との整合性を確認し、法改正以後の対策を立てておくべきでしょう。
4.法改正に向けた対応として
ここ数年、過重労働が原因となった不幸な出来事が続いたこともあり、国が時間外労働の上限時間に絶対的な規制を設けることとなりました。法施行までの期間に、長時間労働が常態化している事業場では、働き方の見直し、業務内容の棚卸と分担など、検討する必要があるでしょう。また2023年には、中小企業に猶予されている60時間超えの割増率についても、50%以上となることから、今から時間外労働の削減に向けた取組みが必要です。